空き家を空き家として所有しておく理由には何があるのでしょうか?
国土交通省が発表した「令和6年空き家所有者実態調査」によると、今後5年間程度のうち空き家として所有しておく意向の世帯における空き家として所有しておく理由について、「物置として必要」である世帯の割合が約56%と最も高く、次いで「解体費用をかけたくない」が約47%、「住宅の古さ」が約37%となっています。
この調査データは、日本の空き家問題が単なる不動産市場の需給ミスマッチだけでなく、「家財整理(片付け)の壁」や「経済的合理性の欠如」といった複合的な要因で長期化している構造を浮き彫りにしています。調査結果の上位データをもとに、その背景と考察をまとめました。
また、相続した物件が空き家になる前に、未然に防ぐ方法には何があるのでしょうか?
調査結果:空き家として所有しておく理由(N=323千世帯)
物置として必要(共通):55.8%
解体費用をかけたくない(取壊):47.3%
住宅の古さ(賃・売):37.0%
さら地にしても使い道がない(取壊):34.8%
取り壊すと固定資産税が高くなる(取壊):28.2%
好きなときに利用や処分ができなくなる(賃・売):27.6%
特に困っていない(共通):26.6%
将来自分や親族が使うかもしれない(共通):25.1%
仏壇など他に保管場所がないものがある(共通):21.6%
家財などの処理が困難(共):21.6%
他人に貸すことに不安がある(賃・売):20.7%
リフォーム費用をかけたくない(賃・売):18.2%
労力や手間をかけたくない(共通):17.9%
住宅の質の低さ(賃・売):17.6%
どうすればよいか分からない(共通):13.8%
借り手・買い手の少なさ(賃・売):11.3%
資産として保有し続けたい(共通):10.7%
希望する価格で売れそうにない(賃・売):7.5%
再建築不可(道路付けの悪さなど)(共通):6.9%
所有者が複数で合意が困難(共通):2.2%
希望する家賃で貸せそうにない(賃・売):2.2%
関係者が認知症などで意思決定できない(共通):0.6%
その他(共通):10.3%
※(共通):共通の理由、(賃・売):賃貸・売却しない理由、(取壊):取り壊さない理由
調査結果のポイント
1. 「実家の片付け」という心理的・物理的ハードル
最多の「物置として必要(55.8%)」に加え、「仏壇など他に保管場所がないものがある(21.6%)」「家財などの処理が困難(21.6%)」といった理由が高い割合を占めています。
- 考察:所有者は家を積極的に使いたいわけではなく、「中にある思い出の品や膨大な家財を処分する決断・作業が億劫」なため、結果的に家全体を物置代わりに放置している実態が見えます。売却や賃貸といった市場流通に乗せる前段階の「片付け(遺品整理・残置物処理)」に対する公的・民間支援(リユース業の活用など)が不可欠です。
2. 解体コストの負担感と「さら地」にするメリットの欠如
「解体費用をかけたくない」が47.3%、「さら地にしても使い道がない」が34.8%にのぼります。
- 考察:木造住宅の解体でも数百万円の費用がかかるため、経済的負担から解体に踏み切れない所有者が多くいます。また、地方や郊外では解体してさら地にしても買い手がつかない(使い道がない)ため、費用をかけてまでリスクを負うインセンティブが働いていません。
3. 住宅の老朽化による市場価値の喪失
「住宅の古さ」を挙げる割合が37.0%を占めています。
- 考察:同調査では、相続された空き家の7割超に「腐朽・破損あり」との結果も出ています。現代の居住ニーズ(断熱性や耐震性など)を満たさない「築古物件」は、賃貸や売却に出したくても借り手・買い手がつかないため、手詰まり感から所有し続けざるを得ない「市場不適合」の罠に陥っています。
4. 税制上の逆インセンティブ(固定資産税の壁)
「取り壊すと固定資産税が高くなる」が28.2%となっています。
考察:住宅が建っている土地は「小規模住宅用地の特例」により固定資産税が最大6分の1に減額されています。家を壊してさら地にするとこの優遇措置が外れて税金が跳ね上がるため、「建物を残しておいたほうが税金が安い」という制度上の歪みが、老朽化空き家の意図的な放置を後押ししています。
総括
この調査から、空き家所有者の多くは「困っていないから放置している(26.6%)」わけではなく、「片付けの手間・解体費用の負担・売れない現実・税金増への懸念」から動けなくなっていることが分かります。
国は法改正により、管理不全の空き家に対して固定資産税の優遇を解除する措置(特定空家・管理不全空家の指定)を進めていますが、それだけではなく「家財整理の初期相談」や「跡地の利活用モデルの提示」など、所有者の背中を押す具体的な伴走型支援 が今後の解決の鍵となります。
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